地方議会のはなし
自治体の関係者以外はあまり関心のない話かもしれません。もっとも、自治体職員とは言え、議会対応は課長以上の管理職と呼ばれる職層の職員だけが役割を分担しますから、一般の職員もほとんどは関心を持っていないと思いますが・・・。
この時期、2月から3月は、地方自治体では議会のシーズンになります。翌年度の自治体予算の審議の時期だからです。
議会と言っても一般的には馴染みが薄いと思いますので、ここで簡単に紹介します。しかし、議会の開催は、自治体によって意外に違いがありますので、とりあえず、私が勤めている自治体を例に話を進めます。
議会は役所のように年中やっているわけではありません。通常は、定例会と言われる議会が開催されるシーズンが年に4回あり、そのうちの1回が予算のための議会でこの時期になります。いま国会でも通常国会と予算審議のための特別委員会が開催されていますが、それと同じですね。通常の定例会のほかには、臨時会というのもありますが、特別の案件がなければほとんど開催されることはありません。国の場合は、よく首班指名などで臨時国会が開催されます。
定例の議会のほかに、年間を通じて活動を行う委員会があります。委員会には、福祉関係の委員会、総務関係の委員会など、議員が分野別に分かれて常設される常任委員会と言われるものと、特別のテーマを設けて年間を通じて審議が行われる特別委員会と言われるものもあります。年間を通じて、随時開催されていて、常任委員会の場合は月に2回から4回の開催です(案件の状況や審議の状況によって回数は変わります)。さらにそのほか、予算審議のときは予算特別委員会、決算のときは決算特別委員会という特別の中の特別の委員会が、期間を定めて開催されています。
今の時期の定例会は、暦年で最初の定例会であるため第1回定例会と呼ばれ、残る3回の定例会に比べると予算審議の分と次年度準備の分で、中身は盛りだくさんです。会期は、自治体によっても異なりますが約1ヶ月間程度です。
先ずは、議員全員の本会議が召集され、議長から定例会の開会が宣言されます。冒頭、自治体の首長が、次年度の自治体運営についての所信を表明します。この所信表明は、首長の施政方針ですから非常に重要なものですが、自治体によっては、一から十まですべて企画部門の職員が作成するところもあります。そんなんで、ホンマにエエのかいな!って感じですけどネ。
その後、代表質問(党派ごと或いは複数の党派でグループを形作っている会派の代表者が、主に首長の所信表明に対して行う質問)と一般質問(質問通告をした議員が、行政運営全般に対して行う質問)が行われます。代表質問は、第1回定例会のときだけに行われ、一般質問は残る3回の定例会でも行われます。
この両質問は、事前に質問の通告が行われますので、通常は、それに対する答弁書がやはり事前に作られています。ですから本番の議会開催時には、質問も答えも「読み上げ形式」になります。演劇のようにはいきませんので、期待して聞いているとつまらなくなります。答弁に対しては、質問者の議員は再度の質問ができますので、その場合は原稿なしのやり取りになりますが、基本形は「読み上げ」ということです。この場合の答弁読み上げは、首長が行います。このような本会議が4日ほど続きます。
これに対して委員会は、質問も答弁もその場で行われますので、時がくるまでどんな質問が出てくるか分かりませんし、答えによっては次から次に質問攻めにあうこともあります。委員会の答弁は、課長級と部長・局長級が中心です。傍聴する場合は、こちらの方が断然面白いことになります。
いくら会期が1ヶ月程度であっても、全議員が出席する本会議を、毎日毎日開催するわけにはいきません。審議すべき様々な案件は、分野別の委員会での審議に回されることになります。委員会は少人数で、分野ごとにかつ専門的に議論しますので、本会議で審議するより議論が深まることになります。・・・・とは言っても、これは、あくまで一般的な話で、本当に深まった議論が行われているかどうかは????な場合もありますが・・・。
一方、翌年度の自治体予算については、分野別に割り振ることはできませんので、委員会でありながら議員全員がメンバーの予算特別委員会という委員会で審議されることになります。この委員会は、約2週間にわたって開催され、その間来年度予算に関する審議だけが、集中的に行われます。
予算特別委員会と言っても、議員の質問は「何でもあり」の状態です。その受け答えをする自治体の課長級の側から見ると、いつ何時、自分が分担する職務に関係する質問が飛んでくるのか分かりませんので、緊張感いっぱいになります。同じような状況は、秋口の決算特別委員会でも経験することになります。
議会が何じゃい!と思われる人もいるかもしれませんが、今の制度上、自治体の運営は住民を代表する首長と議会に任されています。住民の意思を反映して、自治体を運営する最良の方法として採用されているのです。議会は、実は住民が自治体のことを審議し、決めている場なのです。
ですから、この話を参考に、少しでも自分が住んでいる自治体や議会のことに関心を持っていただいて、知っていただければ良いなと思っています。自治体の議会は、原則傍聴ができるはずですから、行って見るのもよいかもしれません。・・・とは言っても、平日の日中に開催されますので、仕事をしている人は難しいことになりますね!議会側も、夜間の開催や休日の開催を行って、少しでも市民に傍聴してもらえるようにすることが大切ですね!なかなかそんな自治体はありませんけど・・・ね。
いずれにしても、自分の住んでいる自治体、議会、地域を知ることは、決して無意味なことではないと思います。(痴呆考無員からのPRです!)