市民活動への支援を考える

「米国には100万、英国には20万、日本には40、さてなんだ?」山岡義典さん(日本NPOセンター副代表理事)の言葉です。

これは、認定NPO法人のことです。日本では本年1月末現在39法人です。簡単に説明すると、NPO法人になっても活動資金集めは容易ではありません、・・・・・というのは、寄附を受けても寄附した人は税控除できませんし、事業活動を行って収益を上げ、それを公益活動に使っても税制上の優遇措置はなく、営利企業と同じです。「認定NPO法人制度(2001年に創設)」では、NPO法人が国税庁長官の認定を受けた場合には、優遇措置を受けられるようになっています。

しかし、審査条件が厳しいため全国で39団体しか認定されていないのです。これでは、実効性の点で疑問が出てくるのも当然で、関係者は、制度施行当初から見直しを要望しています。

何で、「認定NPO法人制度」なのか?とお思いになるでしょう。制度の実効性は横に置くとしても、考え方は、様々な市民活動に対する行政(税金を使った)の支援のあり方として、押えておくものがあると考えるからです。NPO法それ自体も、法人化の道を開くことで活動支援するという捉え方ができるものです。

自治体では、まちづくり、健康づくり、福祉、環境保全、生涯学習、スポーツ振興など行政の分野別に、別の表現をすれば縦割りで、様々な市民活動団体の活動に対して支援を行っています。市民活動団体側も、活動費助成など自治体に対する期待を持ち、場面によっては公的な助成に依存さえしているところもあります。
ここでいう支援、助成は、市民の活動に対するものです。協働する場合の、事業補助とは違うと捉えてください。

私は、自治体行政が、様々な団体の活動に支援するときの基本は、次のようなものであると考えています。行政が支援するに当たって最も配慮しなければならないとは、“市民活動は、本来、自主的、自立的、自発的なものである”ということです。別の角度から考えると、行政が行う支援は直接的な手出しが良いのか、間接的に条件を整えて、活動団体が自ら自立できるようにするほうが良いのか、ということになります。もちろん、私の考えているところは後者です。

当たり前のことと言ってしまえばそのとおりなのですが、これをどのように組み立てるのかになると、結局は直接的な支援、直接的な活動費助成の形になってしまうのです。もちろん、立ち上げ期だとか、人件費に使ってはいけないなどの条件を付すわけですが、最終のスタイルは「餌のバラマキ」でしかありません。

地域ごとに見れば、活動経費の確保に困っている小さな団体が多いという実態がありますから、団体の要望もその方向に流れますし、行政も、助成制度という枠内だけで整理することができる上、行政運営の考え方にまでは影響しないで済みます。

しかし、しかしですよ!本来、市民の活動は自立的であるわけですから、行政のやることは、お金をバラマクのではなく、活動団体自らが資金を集めやすくする、そのような条件を整える方が望ましいのではないでしょうか?望ましいと言うより、そうするべきなのではないでしょうか?

しかし、条件を整えるといっても、法人制度や税制など国の法律がらみの事項が多く、基礎自治体レベルでできることは限られてきます。市民活動団体も、小規模な、サークル的な活動団体が多く、国の制度を活用できる団体は多くありません。

だからと言って・・・・・。自治体行政が支援する場合の基本は、団体の自主的、自立的、自発的な活動を前提にした仕組みとすることが理想的であることには変わりなく、パトロン的な支援の仕方では、百害あって一利なしです。現実も行政の助成依存型活動や行政に言われたからやっている従属型活動が少なくなく、それを物語る結果になっているように見えます。

では、行政としてどうすればいいのか?活動の自主性や団体の自立性を前面に押し立てるだけでは、小規模な任意団体が果たして自ら活動資金集めが容易にできるかどうかの問題には、応えられません。

自治体行政としてできることは、バランスを取ること、兼ね合いの問題になります。まずは、自主的、自立的、自発的な活動を配慮した支援が行政の行うべき支援であるという考え方を基本に置くことが必要です。その上で、団体自らが資金を集めるなどの自助努力をすることに対して応援する、かつ、小規模な活動を行う団体に対しても応援すること、これをクリアしなければなりません。

自治体によって状況が異なりますから、一律の方法などありませんが、直接的な支援と間接的な支援の隙間をつく仕組みを組み立てることが必要です。さらには、市民活動に対して一般の市民の関心が向くような仕組みにすることが必要です。

このような観点で考えると、@市民の寄附が受け入れられる基金を活用して、A行政以外の第三者が運用して、Bコンペ方式など活動経費調達の努力を団体に促して、C資金の使途を寄付者や一般市民に公開して、D資金助成できる仕組みが出来上がります。

既に、同様の制度をつくって運用している自治体もあります。しかし、自治体の事業にすると出だしは一生懸命PRするのですが、一旦動き出すと行革・見直しの対象になってきて、さらに職員の異動による熱意の下落もあって、PRが少なくなります。結果、寄附は集まらなくなり、団体の調達努力が評価されなくなり、状況が公表されなくなって、単なる資金提供になっていきます。基金の運用を行政ではないところが行うところがミソであり、これが課題になると思います。