おじいさんとおばあさんの話(2006.4.6)


久々に、長谷川幸助先生の話の続きです。なんだ?と思う方は、以前のブログをご覧下さい。

『・・・・・・新しい役づくりのシナリオというのは、「地域」とか「家族」の中でどういうことなのかを、私のやってきた調査を例にお話します。

私は、子どもの問題を随分研究してきました。どういうことをやってきたかというと、鹿島アントラーズで有名になった茨城県鹿島郡神栖市の集落に入って、22年間定点調査をやってきました。三世代で暮らしている家族の調査を続けてきたんです。この調査から、「新役」の話をしますからよく聞いてください。

おじいちゃん、おばあちゃんがいる。できの悪い息子がいて、意地の悪い嫁がいる。孫がいる。これが、一般的な三世代の直系血族家族です。私は、このような家族を選んで、「あなたにとって家族は誰ですか?」という、たった一つの質問を22年間続けてきたんです。

この22年間ずっと変わらなかったのは、おじいちゃん、おばあちゃんの考え方です。100%の人が、孫まで含め「同じ屋根の下で暮らしている全員が私の家族だ」と言うんです。

問題は、息子の妻です。ここにも、同じように「あなたにとって家族って誰ですか」って聞き続けてきました。その結果分かったことは何かというと、最初のころ、8割がおじいちゃんとおばあちゃんと同じだった答えが、今は2割しか同じではありません。

今はなんて答えるかというと、今はちゃんと祖父と祖母の下に線を入れるんです。「私の家族は」というと、ここにちゃんと線を入れるんです。

なぜかという理由も解けています。家族と言うのは、日本では血族家族で血のつながりですから。例えば、私を例に考えると、おじいちゃん、おばあちゃんから出た長谷川の血筋は息子に行き、息子に行った血筋は孫に行くのです。たった一人だけ血統が違う人がいるのです。それが、息子の妻です。息子の妻が、家族をどうやって結ぶかで苦労してきたのが日本の嫁の歴史です。

でも、あっという間につながることがある。あっという間につながる条件が分かりますか?祖父母がいなくなった時です。祖父母がいなくなれば、血筋は祖父と祖母の下からはじまる。でも亡くならない、元気です。おじいちゃんが何か言ったら、聞こえなかったことにする。おばあちゃんが何かしても、いなかったことにする。こうして、溝を深くしてきたんです。

問題は孫に現れてます。この部分の調査は、小学校に上がる前の幼い子どもたちに絞ってきました。なぜかというと、小学校にあがると、子どもは世間の垢にまみれる。大人の顔色をうかがうようになるんです。でも、保育園と幼稚園の子どもはそうじゃないから。

何て聞くかというと、「あなたにとって家族ってだれのことですか?」って聞いたらわけが分からないだろうから、「ままごとするときは、どんな役がいいの?」って聞きます。

そうすると、メロンパンナちゃんとかアカレンジャーとか、いろんなヒーローとかヒロインの間にお父さんとかが入ってくる。その順番を見ればいい。一番はおかあさん、これは不動の1位です。最近、2番目はお父さんじゃなくなったんですよ、兄弟やお友達です。3番目がお父さんになりました。

問題は4番目。ここが、全国で、私の調査が評価されているところです。おじいちゃんか、おばあちゃんか。ここまで、調査は入っているのです。おじいちゃんとおばあちゃんの「役」はどうなのかってことを調べたいからです。

それじゃ、おじいちゃんだと思う人は?手を挙げて。7〜8人かな。それじゃ、おばあちゃんだと思う人?ほーらね!みんな、おじいちゃんは疎外される運命だって分かっているんです。

・・・・正解は、4番目「ペット」です。おじいちゃんでも、おばあちゃんでもなかったのです。これにはびっくりしました。どうして、おじいちゃん、おばあちゃんよりペットの方がいいのかって。おじいちゃんとかおばあちゃんの役をやると、黙って座っているだけだけど、ペットだと「ワンワン」とか「ニャーン」とか言えるらしいのです。それだけ、祖父母と孫の関係が切れた。つまり、祖父母って「役」はボロボロになってきたっていうことを言いたいんです。・・・・・・』