■前提条件
- 改造は自己責任で。ここに書いてあるとおりやって壊したなどのクレーム、製作依頼などは一切受け付けません。
- ここでは、自転車用ライトの電源をダイナモ(ブロック・リム・ハブ)によって供給することを前提に書いている。
- Luxeon StarはLumileds社が開発したLEDであり、1W、3W、5Wのシリーズがあり、中でも3Wのものは明るさ(輝度・照度・「超高輝度LED」といわれるものの約30倍の明るさ)と寿命(約10万時間・5Wのものは寿命が短い)のバランスに優れていて、自転車の灯火として十分実用に耐えるスペックをもっている。
- SF-301はLuxeon Star 3Wを使用したGENTOS社の懐中電灯。
- 【コンセプト】安定化も瞬断対策もなし、最低限の構成で最大の効果(実用)を実現したい。
■なぜダイナモとLEDなのか
- 長寿命(ダイナモ)……構造がシンプルなのでメンテナンス次第で何十年でも使える。30年前から使っているブロックダイナモが現在でも使用可能な状態にある自転車(ランドナー。もちろん、自転車も現役)に乗られている方が著者の知り合いにいる。
- 長寿命(LED)……ダイナモライトで電球切れに泣かされた人は多いと思う。LEDはその点でも安心して使用できる。LuxeonのハイパワーLEDは、LEDとしては寿命が短い部類に属するが、実際の寿命が公称の10万時間の半分5万時間と見積もったとしても、毎日1時間で年間300日使用して166年、自転車の寿命はもとより、人間より長生きということになる。
- 省エネ(ダイナモ)……ダイナモは重いと言って敬遠される風潮がある。しかし、優れたブロック・リムダイナモ(ディスカウントで売られているものでも)は、調整次第で負担に感じることのない軽さにできる。
- 省エネ(LED)……LEDとダイナモの相性が良く、電球からLEDに変えると、消費電圧の関係から音が静かに、ペダルも軽くなる傾向が認められる。
■整流回路
- SF-301は、電池(CR123A×2本・直列6V)による直流電気によって点灯する。しかし、この電池(CR123A)は非常に高価であり、駆動時間も約3時間と短く、そのまま自転車で使うにはコストがバカにならない。
- ダイナモによって発電される電気は交流電気であり、クリプトン・ハロゲンなどの電球には使えるが、逆電圧に弱い(壊れる)Luxeon Star 3WなどのLEDには使えない。
- 交流電気を直流電気に変換する回路が「整流回路」であり、Luxeon Star 3Wをダイナモで使うためには整流回路が必要。
- 整流回路には基本的に次の2つの種類がある。
- 半波整流……整流ダイオード1本。しかし、これではダイナモで発電した交流電気の半分を捨ててしまうことになり効率が悪い。ただし、後述のテールライト(赤色LED)には十分。
- 全波整流(ブリッジ両波整流)……ブリッジダイオード1個(または整流ダイオード4本)。ヘッドライト(SF-301)に使用可。
■Luxeon Star 3W単体でなくSF-301を使うメリット
- LED単体で買えば3000円程度、SF-301はディスカウントでも5000円前後だが……
- SF-301にはCR123Aという3V出力の電池2本が直列で使われており、合計6Vの電圧をLuxeon Star 3Wの定格である3.7V(電流は700〜1000mA対応)に落として(降圧)LEDに供給するためのDCコンバータが付いている。
- このLEDと一体になっているDCコンバータを使えば、ダイナモでLuxeon Star 3Wを使うためには整流回路のみを用意するだけで足りる。
- SF-301に組み込まれているリフレクタ(スポット)を自転車用ヘッドライトに組み込まれているリフレクタ(広角)と合体させて使うことによる相乗効果が期待できる。
- 【注意】Luxeon Star 3Wを使ったSF-301以外の製品には昇圧回路が組み込まれているものがあり、それらにはここで述べられている方法は適用できない(同じことをやるとLEDを壊してしまう)ので注意。
■材料
- ダイナモ……ブロック・リム・ハブダイナモなどを使用する自転車。
- ヘッドライト……ダイナモの使用を前提に製作されたもの。
- SF-301……LED(Luxeon Star 3W)・DCコンバーター・リフレクタ・本体の一部を使用
- ブリッジダイオード……1個
- W02G(耐圧200V)、W04G(耐圧400V)など
- 1個あたりの価格は数十円
- 4本足
- +(プラス)と−(マイナス)、〜と〜は対角線上に配置されている(足が4本並んで付いているタイプのものもある)
- 電解コンデンサ……1個
- 整流しただけの電圧波形は蒲鉾型(サイン波形)の脈流になっているので、より直流に近い波形にする(平滑化)目的で使用。
- 【注】SF-301のDCコンバータにコンデンサが使われているので、平滑化のためのコンデンサは使わなくても行ける。
- 2本足
- 50V・220μF/330μF/470μF/1000μFなど……容量は小さいものでもOKだが、スピードによって増大するダイナモの交流電圧を考慮すると、耐圧は最低でも50Vのものを用意したい。
- +(プラス)と−(マイナス)はコンデンサの側面に分かりやすく表記されている。
- 極性を間違えると破裂する。
- その他……配線用コード(0.3〜0.5mm程度)・熱収縮チューブ・耐熱テープ・ハンダなど
■SF-301本体の加工
- SF-301本体のリフレクタ及びLED・DCコンバータが収まる部分を残して、鉄ノコ又はパイプカッター(自転車乗りなら持っている人は多いと思う)などで切断
- 【注】ヘッドライト本体には、この切断したSF-301の本体が収まる奥行きが必要
■整流回路の製作
- ブリッジダイオードの+をDCコンバータの電極板(SF-301の電池[CR123A]の+電極が当たる部分)へ、−をDCコンバータの−側(上記SF-301本体の切断面など)へ、〜の2本はそれぞれダイナモ及び車体アースに接続する。
- 【以下は、コンデンサを使う(平滑化する)場合】
- 5o程度被膜を剥いた配線コードとブリッジダイオードの+側の足とコンデンサの+側の足を半田付け。余分な部分を切り落とし、熱収縮チューブなどで処理。この線はDCコンバータの電極板に接続する。
- 同じく、配線コードとブリッジダイオードの−側とコンデンサの−側を半田付けして上記と同様に処理。この線はDCコンバータの−側に接続。
■ヘッドライトへの組込み
- 上記SF-301本体にLED・DCコンバータを収めて、リフレクタを装着する。
- ブリッジダイオードの2本の〜から出ている足には、それぞれ配線コードを半田付けして接続。この線は、一方をダイナモからの電源コードに、もう一方はアース(普通はヘッドライト内にアース用の電極板が出ている)へ接続する。
- 整流回路の4本足が互いに接触してショートしないように処理し、絶縁テープなどを巻いておく。
■リフレクタの加工と取付け
最近のダイナモ用ヘッドライトは、プラスチック製のものがほとんどで電極版のみ金属という構成になっている。
SF-301に使われているリフレクタは、そのままではヘッドライト側のリフレクタの穴(豆電球をセットする部分)に入らないので、ライト側の穴を削って広げる加工が必要になる。
現在流通しているヘッドライトで、サンヨー製(ダイナモとセットで売られている)は前面レンズとリフレクタがプラスチックの一体成型になっていて、リーマーは使えないのでヤスリなどを使って根気よく加工する必要がある。
ミツバ製(東急ハンズでヘッドライト単体で売られている)は、リフレクタの部分が独立していて取り外し可能な構造なので、リーマー(ただし、25o程度まで穴を広げられるもの)を使うことができる。
【写真の砲弾型ヘッドライト】
これは三洋製でも上記の現在流通しているものではなく、旧型のもので金属製のボディ、レンズとリフレクタは現在のものと同じくプラスチックだが分離可能。大きさも十分で内部もシンプル。
- ライト側のリフレクタはプラスチックなので、ナイフなどでも削りやすいが、慎重に加工して、SF-301のリフレクタがピッタリ填まる大きさにしなければならない。
- ライト側のリフレクタの厚みはせいぜい1o程度、本体に装着したSF-301側のリフレクタは2o以上の長さがあるので、そのまま装着するとライト側のリフレクタに死角ができてしまう。
- そこで、SF-301のリフレクタにシリコン(耐熱性・東急ハンズ素材売場)の輪ゴムを填めて、SF-301のリフレクタがライト側のリフレクタから必要以上に頭を出さないように調整する。
- これにより、SF-301のリフレクタによる遠くまで届くスポット的な照射とともに、ヘッドライト側のリフレクタによる広角の照射も得られる。ていうか一石二鳥。
■配線〜最終段階
- サンヨー製ヘッドライト(新型)の場合、内部に電極板が2つ出ていて、一方はダイナモから、もう一方はアース側になっているので、ブリッジダイオードの「〜」につないだ配線コードをそれぞれの電極に接続(どちらでも良い)するだけ。ダイナモからのコードは、ヘッドライト下部に出ている端子に挟めば良いだけなので、保守性・密閉性に優れている。旧型については写真参照。
- ミツバ製ヘッドライトの場合、内部の電極板はアースのみで、ダイナモからの配線はライト下部の小さな穴を通して、ブリッジダイオードの「〜」につないだ配線コードの一方と接続する必要がある。ここは、単により合わせてテープを巻いて絶縁する程度で十分。ブリッジダイオードの「〜」につないだ配線コードのもう一方はライト内の電極板(車体アース側)に接続する。
- 【整流回路の外付け】上記以外のヘッドライトで、ライト本体の容積が小さく、整流回路を収めるスペースが確保できない場合、整流回路と配線をまとめて外付けのプラスチックケースなどに収める方法もある。この場合、ケースの防水、自転車への固定方法などにも留意。
【注】コンデンサを使用しない整流回路(ブリッジダイオードのみ)なら、かなり小さなヘッドライトにも収納することが可能。
SF-301をそのまま懐中電灯として使用する場合、本体全体でLEDの発熱を吸収して放熱するような構造になっているが、ここでは一部だけを使用した工作なので、LEDの発熱と寿命については長期間使用してみないと結果は出ない。
要するに、放熱対策が不十分な改造によって、高価なLEDが壊れたり、寿命が短くなってしまう可能性は十分考えられるので、あくまでも改造は
自己責任で。
■材料
- SF-301……LED(Luxeon Star 3W)・テールキャップと電池以外全部使う。
- ゴムパッキン……水道用補修部品。上記SF-301のテールキャップとして使う。ケーヨーデイツーで購入。
- ブリッジダイオード1個(数十円)
- 電解コンデンサ……1個。平滑化用。耐圧50V・【注】使用せずに整流回路のみでも可。
■製作
- ブリッジダイオード(平滑化したい場合は電解コンデンサを加える)で整流回路を作成。
- ブリッジダイオードの+側の配線コードをDCコンバータの電極に半田付け。
- ブリッジダイオードの−側の配線コードは、SF-301本体内の任意の場所に接続。
- ブリッジダイオードの「〜」からの2本の配線は、テールキャップ(ケーヨーデイツーで購入したゴムパッキン)の穴から外へ出し、ダイナモ及び車体アースへの配線として使用。
- 上記加工済みのSF-301本体を、任意の場所に固定。また、SF-301本体が自転車の金属部分に接触(アース)していれば、アース用の配線は不必要になるので、ダイナモ用の配線のみで足りる。
- SF-301の本体をそのまま生かしているので放熱の心配がない。
- 【問題点】SF-301をそのまま使うので、照射範囲がスポット的で狭い。
■Luxeon Star 3Wの すごい 威力
LEDの特性から、歩くような低速から坂道を40キロオーバーで下る時もほとんど変わらない明るさで照射する。停止する寸前まで点灯しているし、押し歩いている時でも照らしている。リム(ブロック)ダイナモをリム(タイヤ)に押しつけてない状態で、指で軽く回すだけでも点灯するほど。
歩行者や四輪などに対する視認性が優れていることは言うまでもないが、ライトの角度は歩行者や他の交通機関との関係(上向きになっているとまぶしいはず)をよく考慮した上で決めるべきだろう。