拡張型心筋症の薬物治療としては、対症療法として心不全に対しての治療、不整脈などに対する
治療が行われる。
従来は心不全患者に使うことは「禁忌」というのが医学会の常識だった。
ACE阻害薬/ベータ遮断薬が近年、治療薬として注目され、使用されるようになってきた。
○ベータ遮断薬
- ベータ遮断薬は、交感神経系の働きを抑えて心臓を休める。馬の例えで言えば歩みを緩める
効果がある。
国立甲府病院の布田内科医長は、5年前、ACE阻害剤や強心薬、利尿剤を使っても症状が改善
せず、一時は心臓移植も考えられた拡張型心筋症の患者にいち早くベータ遮断薬を試みたところ、
6か月後には日常生活に支障がないまでに改善、心臓の大きさもほぼ正常に戻り、無事退院した。
布田医長は、「すべての患者に有効と言えないが、当初は改善が見られなくても、1か月、
2か月と経過するうちに効果が出てくることも多く、重症の心不全の患者にはぜひ試してみる価
値はある。」と語る。
ただ、この薬は心機能を低下させるため、かっては重症心不全患者に使ってはならないとされて
いた薬で、使う際には専門医によるきめ細かな対応が欠かせない。榊原記念病院(東京都渋谷区)
の大滝英二内科部長は「必ず入院してもらい、少量から始めて慎重に薬の量を加減することが大
切」と指摘する。
(1997年12月15日 読売)
- 重症の心不全になると、心臓を活発に働かせようとして強心剤にも使われる神経伝達物質が
多量分泌される。その働きを抑えるβ(ベータ)遮断薬が治療薬として注目されている。
不整脈を抑えたり血圧を下げる薬として1970年代に開発されたが、心機能を低下させるので
心不全患者に使うことは「禁忌」というのが医学会の常識だった。
80年代の終わりに、ごく微量を使えば心臓を休めることになり重い心筋症の改善を図れるとい
う論文が相次いで発表された。ここ数年は臨床で使われ、効果を上げている。日本循環器学会が
定める心臓移植の適応条件にも「β遮断薬を使っても改善されない場合」という項目が
加えられた。
国立甲府病院に入院した32歳の男性の場合、拡張型心筋症の末期で心不全の発作を数回起こして
おり、移植以外には治療法がないと見られていた。しかし、β遮断薬を使って2ケ月後で心臓の
大木が普通になり、6ケ月後には退院することができたという。
同病院の布田伸一内科医長は「心筋の能力があまり悪くならないうちに使うのがポイント。
患者によって3−6ケ月で結果が出てくる場合もあり、根気強い治療が必要だ」と指摘する。
(1998年02月10日 毎日)
- 心不全に対して、心臓をもっと働かせようとする従来の考えとは逆に、「休ませる」という
発想からβブロッカーが注目されている。(1998年03月31日 読売)
- 超重症心不全においてベータ遮断薬導入が困難であることも稀ではない。また、一部の例では
増悪する危険性があることも知られている。
- 拡張型心筋症へのβ遮断薬の効果など
心臓・心臓病Q&A−β遮断薬は心不全にも効果があるのでしょうか (北海道心臓協会)
- β遮断薬の一般的な説明
薬のガイドデーターベース ベータブロッカー (国立医薬品食品衛生研究所)
- β遮断薬の説明
- β遮断薬・カルベジロール使用のガイドライン(筑波大学臨床医学系内科におけるガイドライン)
(Heart View 1998.5のDCM特集号より)
カルベジロール使用除外基準
75歳以上の高齢者
省略(2項目あり)
低血圧(収縮期血圧<=90mmHg)
現在、心原性ショックまたは重症のうっ血性心不全を発症している症例
肝機能障害、腎機能障害、気管支喘息、コントロール不良の糖尿病の合併
投与法および投与量
原則として入院で投与を開始する。20mg/日以降は外来でも治療可とする。
カルベジロール2.5mg2×より開始し、7日ごとに増量する。
(2.5mg/日−−5mg/日−−7.5mg/日−−10mg/日−−15mg/日−−20mg/日)
定期観察項目
毎日:体重測定、血圧・脈拍測定、聴診・浮腫など身体所見の確認
1週ごと:心電図、胸部X線写真、6分間歩行距離
中止基準
自覚症状、NYHA心機能分類、肺うっ血、心拡大の明らかな悪化
収縮期血圧<=90mmHgの低血圧
心拍数<=50bpmの徐脈
腎機能障害、肝機能障害の出現
注;このガイドラインを参考にしている病院はあるでしょうが全国的に統一されたものでは
ないと思っています。通院で投与開始している病院もあるようです。(snakajii)
カルベジロールは一般名で商品名はアーチストです。
○ACE阻害剤
- 慢性心不全や弁の逆流などにはACE阻害剤という降圧剤の一種が効果があり、数年前から
使われている。(1998年03月31日 読売)
- ACE阻害剤の一般的な説明
薬のガイドデーターベース ACE阻害剤 (国立医薬品食品衛生研究所)
○その効果と適用条件など
このACE阻害薬/ベータ遮断薬により拡張型心筋症の心機能が改善するといわれているが、
その頻度、規定因子、予後は十分に知られていない(わかっていない)ようである。
また、効果があることは判ってきており使われているが、明確には「効果と適用条件など」は
判っていないようである。
最近の日本循環器学会 総会・学術集会(1998年(第62回),1999年(第63回))でも、いくつかの
論文が発表されている。これらに関してはあとでまとめて書きます
- ACE阻害薬は、心不全患者2,600人を対象に行った欧米の研究(SOLVD)で、
患者の死亡率を16%も低下させる成績をあげ、専門家の注目を集めている。また、心機能低下を
起こしている心不全予備軍の患者4,200人を対象にした、このときの研究でも発症を37%も
低減するとの結果が出ている。
わが国のACE阻害薬ではレニベース(商品名)が唯一、慢性心不全の治療薬としての承認を得て
いる。
(1992年5月25日 読売)
- 血圧降下剤でもあるACE阻害薬は、慢性心不全患者を対象にした米国の複数の大規模臨床
試験で、服用しなかった患者に比べ1−3割死亡率が低下、延命効果があるとの結果がでており、
2年前、米心臓協会(AHA)と米心臓病学会(ACC)が共同でまとめた心不全ガイドライン
では、第一選択肢に挙げられている。
(1997年12月15日 読売)
- 順天堂大循環器内科グループが、拡張型心筋症の患者に、降圧剤として開発されたベータ遮断薬
やACE阻害薬で治療した場合、重症患者でも五年生存率が、薬を使わなかった患者より四倍
近く高いことを見いだした。拡張型心筋症患者の治療法として期待されている。
同科の河合講師と大井川医師によると、1986年から昨年まで同大学病院で治療を受けた重い
拡張型心筋症患者43人の薬歴を分析した。その結果、ベータ遮断薬やACE阻害薬で治療を受
けた30人の5年生存率は79%だった。これに対し、他の治療を受けていた13人は
21%とかなり低かった。また、早歩きすると息切れする程度の症状の患者を加えた
80人で比較してみても、こうした治療を受けた50人は89%で受けなかった
30人の73%と差があったという。
大井川医師らは「症例が増えるのを待って、どちらの薬を使った方がより効果的かや、両方併用
した場合の効果などを確かめていきたい」と話している。
(1998年05月03日 朝日 内視鏡)
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