ハート バチスタ手術体験記   読者の体験記 y-9
読者の体験記。y-9

読者の体験記 y−9
手術〜ICUでの目醒め



 3月19日午前9時25分に手術室に入り直ぐに点滴による麻酔をかけられて意識がなくなりました。 麻酔が醒めて直ぐに看護婦さん(ICUでは患者1人にナース1人が付き、常にベット脇に付いている) に『 今日は何日、今何時、ここはどこ? 』と聞きました。『 今5時よ、手術が終って2時間たった ところよ、ここはICUよ 』と言われました。未だ麻酔がすっかり醒めてないせいか非常に眠い感じで トロトロと眠りに入ると『 Yさん!眠らないで。しっかり目をあけてください。Yさん! 眠っちゃダメよ 』何度も起こされてしまいます。

 私は看護婦さんに聞きました『 いま、私は死にかけているのか? 』と。とたんに看護婦さんが ゲラゲラ笑いながら『 なんでそう思うの? 』『だって目をあけろ、目をあけろと言って眠らせてく れないし、私には看護婦さんが2人も付いてるじゃないか 』と私。看護婦さんはゲラゲラ笑いながら 『 私はYさん付きの看護婦、もう一人は横浜のほうの病院からICUの研修に来ているのよ。Yさんて 面白いね。麻酔から醒めるなり、おれ死にかけてるのか、なんて言った患者さんはYさんが初めてよ。 たいていの患者さんは青息吐息でむっつりしてるわ。しっかり目を開けて眠らないでと言ったのは、早 く麻酔から醒まして麻酔の悪影響を避けるためなの 』ということでした。

 自分の身の回りを見まわすと8袋の点滴とそれを注入する管が首に1本、両腕に1本ずつ、そして鼻 から胃へ管が1本、心臓の鼓動を管理調節する簡易ペースメーカーが心臓部に1本、オペ後の体内の汚 血等を体外へ出すドルーンと呼ばれるゴム管が心臓部から1本、胸骨の下あたりから1本、へそ下の右 腹から1本、股の間から導尿管が1本出ています。

 『 なんじゃこりゃ、心臓手術のあとはスパゲッテー症候群じゃないか。それと僧帽弁に入れ替えた 生体弁は豚の弁ときいたけど、白豚かな?,黒豚かな?どうせなら高価な黒豚のほうにしてもらいた かったな…』と言ったら『 また面白いことを言う 』と笑われ、とうとう面白い患者ということで ICUの看護婦さん達の一躍人気者となってしまいました。そしてICUをでるときは数名の看護婦さん たちと記念写真まで撮る事態でした。

 麻酔が覚めてしばらくするとものすごく口が乾きます。看護婦さんに口渇感を訴えると綿に水を含ま せ割り箸で口の周りを湿らせてくれます。術後2日目にはどうにも我慢できず綿に噛みついて奪い取り、 思いきり吸い取ったりもしました。それでアゲもせず大丈夫だったせいか、その日の午後からは100cc ほどの水を3,4 回にわけて飲ませてくれました。

 術後3日目の朝7時30分に抹茶ゼリー様のものとプリンの様なものが一切れずつ朝食として与えら れました。が、全く食べられません。点滴が多くてお腹がすかないのです。この日のお昼からはお粥と 煮魚などの普通食になりましたが、ICUにいた4日間はとうとう食欲がわきませんでした。それは点滴の せいばかりでなく、トイレの大のほうの問題もからんだ心理的なもののほうが大きかったのかもしれま せん。

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 さて、術後2日目の午後には家族2人だけの面会が許されて、手術当日の話をかみさんから聞いたの ですが、私が手術室に運ばれた後、院内だけで通用する特殊な携帯電話を貸し与えられ、家族に用が あったときに連絡するから2階ロビーで待機していてください、と指示をされたそうです。

 かみさんは手術が終るのは早くて4時半、まあ5時過ぎになると思っていてくださいと言われたので、 病院近くのコンビニから弁当を買ってきて昼にはロビー(ロビーは1階と2階にあり、しゃれた応接 セットが何組もおいてあり手術を受けている患者の家族や予約診療の患者が数名いるだけで非常に静か で、すいているホテルのロビーといった感じ。

 この病院は日に手術は2人だけ、外来はすべて予約制で1日6,7人なので他の病院のように長いすがい くつも置いてあって、患者が何十人何百人もうろうろしていることは全くない)で150 円で飲み放題の ウーロン茶やコーヒーを飲みながら弁当を食べて待機していたところ、突然携帯電話のベルがなり 『 須磨名誉院長から直接お話があるので6階の名誉院長室まで来て下さい 』という呼び出しがあった という。

 時計を見たら丁度2時30分。『 こんなに早く呼び出しがあったというのはきっと難手術でどうに もならないとか危篤状態なので一目会ってくれとか、大変な事になっているにちがいない 』と瞬間的 に悪い事態が頭をよぎり、エレベーターを待つのももどかしく、夢中で6階まで階段を駆け登ったそう です。

 名誉院長室のドアにたどりついたところで、須磨先生が食堂から口をもぐもぐしながら廊下を 歩いてこられ、『 Yさん、手術は無事終了しましたよ。今頃はナース達が体の汚れをふき取って パジャマを着せている頃なので、3時頃にはご主人の顔が見られますのでもうちょっとお待ち下さい』 と言われて、急に緊張がほぐれ頭の中が一瞬眞ッ白になり『 有り難うございました 』というのが 精一杯で、それ以上の言葉がでなかったそうです。

 3時過ぎに麻酔で身動きもしない私とICUで対面させられ『 麻酔で眠っているだけで心臓の鼓動は しっかりと動いていますから、もう心配はありませんよ 』と他の先生に言われたそうです。
(2002.6記)

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