
ある土曜日、知人のお宅にお悔やみに行きました。
そちらのご主人が去年の秋に亡くなられたのを聞いたのはつい最近のことで、わが家の時にもいらしてくださったことを考えて、お知らせはなかったものの、行くべきと判断したのでした。
初めて伺うその代々続いたお宅は広壮な邸宅で、鬱蒼とした庭木の中にうずもれたような雰囲気で、庭のあちこちに犬小屋が点在し、重い鉄の扉の中に入った途端に、怪しい奴めの到来を感知したかのように、あちらこちらから吠えられました。
古い建物の廊下の うすぼんやりとした灯りの中に、ぼうっと浮かび上がる亡くなった方の写真と花が、何かを語りかけるようにじっとわたしを見つめて、なんだか背筋がぞくぞくしました。
きしむ廊下を渡って、棟続きの新しいリビングルームに通された時は、心底ほっとしたのも事実です。
2時間ほどお邪魔する積りで行ったのに、一人暮らしの奥様に引きとめられるままに夜まで座り込んでお喋りの相手をし、話の途切れた時にチャンスを見つけて立ちあがり、家にたどりついた時は11時でした。
私だったらこの家を売って新しい高級マンションに入るのになあ、と思い、その考えも進言したのに、どうもその気はなく喋りつかれた私は、13回忌までは頑張るというその「りき」のいった言葉を、なんだかぼんやりと聞いていました。
そして……翌日私はなんだか体調を崩してしまいました。
目に見えないなにか、重たいものを背負って帰ってきてしまったようです。

日曜日の午後、とても素敵なコンサートに行きました。
華麗な中に洗練された理知が満溢している仲道郁代さんのピアノはいつ聴いても、心がふんわりと温められます。
何か月も前に娘が買って呉れたチケットは、その時点で、もうサントリーホールの客席と向き合うステージの後ろの席しか残っていなかったのですけれど、初体験したその席は、思いがけなく素敵なポイントでした。
華麗な古典の演奏(当日はベートーヴェンでした)はもとより、絶妙なトークが楽しい彼女のコンサートは、その格安にして思いがけない最高のアングルの発見で今迄で最高の午後となりました。
指揮者の表情を真正面から見ていると、いつもの客席からでは計り知れない細部にわたる演奏者の心が伝わってきます。
ただ惜しむらくは、座席の幅が少々狭くて、出はいりで難儀しました。
ヨーロッパのホールは古い建物がたくさんあって、それは横に長い座席で、中央に通路のないことが多く、出入りの時に皆通る人のためにさっと立つのですけれど、日本ではまだそういうマナーは定着していないようです。
でもひとつ、最近は高速道路のサービスエリアでさえもトイレの並び方がフォーク方式になったのは、コンサート会場が始まりだったような気がします。
余談はさておき、この日のコンサートはほんとうに素敵でした。コバケンさんのニックネームで知られる小林研一郎さんの指揮は表情豊かで、オーケストラとの息がぴったり。
管楽器の部分的ソロに出すOKサインにも心が満たされました。
今までの座席では見えなかった指揮者とソリストの目のサインもとても素敵で、なんだか私も演奏の仲間入りをしているような気分でした。
帰りに立ちよったコンサートホール横の、カフェのデザートの甘かったこと!
気分も120%スイートでした。
この日は行きがけに六本木一丁目の地下鉄の駅で降りた時、何故か足の付け根がぎくりと痛みました。それから3日間この痛みは去ることなく、でも、楽しいコンサートだったので、差し引きゼロということで納得しました。
でもひそかに、この痛みはお悔やみに行ったときに持ってきてしまった「もののけ」の仕業のような気がしてなりません。

バレンタインの夜は本格的な初雪となりました。10年ぐらい前までは、雪が降るとわくわくして、起きぬけのまだ止まない雪の中で嬉々として雪かきに励んだものでしたけれど、この2、3年雪らしい雪を見ないうちに冬が終わってしまい、今年は、明日のことを考えると気が重くなります。
以前まだ若くて元気だったころに、夫の先輩の奥様が、「若いころは雪かきをしない家が腹立たしいと思っていたのだけれど、自分が歳を取ったら、とてもそんなことをやれないようになって、今になって理解できるのよ」とおっしゃっていたのを思い出しました。
何事も自分が体験して初めて解るものなのですよね。
この数日、頸椎の不具合が再発して、朝方痛みで目が覚めることが多いのも、ひょっとしたらこの突然に襲ってきた低気圧のしわざもあったのかも。
でもお天気については誰も文句は言えませんよね。だから凍りつくような夜更けに、しんしんと降り続く雪を窓越しに楽しく観賞しています。
明日はデイホームで「雪の降る街を」を歌うことにしましょ。
テレビをつけたら、育ちの良さげな若者たちがコマーシャルで♪~親孝行がしたい~~ でもやりかたがわからない~~♪とにこやかに歌っています。一瞬あほか!と呟いてしまいました。
最近は親孝行という言葉も死語に近くなってしまったのかしら?
「あのね、君たち、親孝行なんて簡単なことなのよ、いつも元気で明るく、まわりと仲良く円満に、警察のお世話にだけはならないで……それで充分なのよ」。
三泊四日で台北に行きました。ずっと前から一度は行きたいと思っていた台湾訪問ですが、今回の旅は一生忘れられないものになりそうです。
何故かというと、現地入国から出国まで、ず~~っと雨!半端ではないどしゃぶりにも数回見舞われました。
この旅は例によってクラブツーリズムの一人旅ツアー「ララの会」で、参加者は19名、そして、最高年齢者が90歳の男性で、一番若い人が48歳の独身女性でした。
全員が一人旅ツアーのエキスパート。今回もとても快適な4日間を満喫してきました。
羽田を飛び立って4時間後台北ですぐに仲良くなったお仲間も、お互いの仕事も住所も年齢も、本人が話さない限りは知らないまま、4日後に現地で「さよなら、またどこかでね~」と流れ解散。
これってなんともスマートで病みつきになります。
ついこの間ドバイに世界一の座を譲った 忠烈祠で衛兵の交代
台北101の89階からの俯瞰 仕事中はまばたき禁止とか
「千と千尋…」と名作「非情城市」の 願い事を書いて夜空にとばす天燈上げ
舞台、九份もどしゃぶりでした たっぷりと願い事をしました
花博はもの凄い人出で、パビリオンには 旧正月の市役所広場 最後は圓山大飯店
入れずじまい らんたん祭り の豪華昼食
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