雀のお宿のコンサート

 私の住む町はお祭が好きです。先月も3日間、隣同士
の町が競ってさまざまなイヴェントを繰り広げました。
 坂の下では、フランス語の名前をつけた通りのお祭りで
駅前の長いロードに赤いじゅうたんを敷いて町じゅうの
商店の出店が、さまざまな趣向をこらして、とても賑やか
でした。



 緑の遊歩道では、カップルや家族連れ、ペットまでが、
桜並木に作られたステージでのシャンソンとマジックショー
を楽しみ、町内のレストランがテント張りで開いた、ワイン
やお料理の店の周りのベンチは終日満杯でした。



 そんな賑わいを尻目に、私はこのイベントで恒例の
障害者施設の人たちが作った、美味しいクッキーを買った
だけで、坂の上のコンサートを
聴きに走りまし た。



 坂の上のミュージックフェスティバルは、今年で4回目、
私の住む町の商店会の肝いりで始められたものです。
 


 この日のお目当ては東儀秀樹さんです。
 駅前の噴水広場は、既に満員でした。去年の出演は飛び入りでしたが、今年はなんと1時間半の独演会です。

 打ち明けますが、これまで私は、東儀秀樹さんにあまり興味をもっていませんでした。テレビの箱の中のクールな表情に、なにか私とは相容れないものを感じていたのです。
 でも、会場の近くまで行った時に聴こえてきた、篳篥(ひちりき)の哀愁を帯びた「なまの音色」に、なんだか胸の中がずんと反応してしまいました。

 私はもともと西洋楽器のなかでは、オーボエが一番好きなので、オーボエのルーツと謂われる篳篥が嫌いなわけはありません。

 でも何より、今まで知らなかった東儀さんという方の温かい人柄と間口の広さに、ただただ惹きつけられてしまいました。

 ユーモアあふれる語りを交えながら、本業である雅楽はもとより、ピアノ、ポップ、ジャズ、そしてビートルズのイマジンまで〜これは素晴らしい歌唱力を披露なさいました〜
オリジナル曲を含めて、ただ一人のステージで縦横無尽の大活躍です。

 勿論無料です。東儀さんいわく 「只なんだから何でもやっちゃう」

 この会場となった駅前広場は、3本の大欅と噴水だけで、後は何もありません。毎日夕方になると、この欅の木は雀のコーラスで溢れます。でもこの日だけは、いつも我が物顔の鳩も雀も鳴りをひそめました。

 半分人間を自覚しているらしいカラスだけが、東儀さんのお話に合いの手を入れて笑いを誘いました。
 そして、絶えず来る電車の音も自動車の騒音も、まったく気にならないほど満員の聴衆は東儀さんの音楽に惹きつけられてしまったのです。

 特に東儀さんが「ご年配の方にもこれなら判るはず」 と仰って吹かれたスローテンポの 「ふるさと」 の絶妙な音の表情には、涙ぐまれていた方もありました。

 これほど演奏者と聴衆が一体となって、溶け合ったコンサートも、珍しいと思います。
 唯一悔やまれることは、カメラを持っていかなかったことです。皆様にご披露できないのが残念です。
 
 東儀さんは、この度上海で、オーディションをして、中国の6人の優秀なミュージシャンとコラボレーションを組まれとか。
 音楽を通して、日中友好を図ることによって、人間同士が優しい気持になって仲良くなれる活動をしたいというお話は、皆の共感を誘いました。

 7月に開かれるこのコンサートには、是非
行こうと思っています。

 そして、この素晴らしい方と同じ町内に住める
幸せをも、感じている今日この頃です。

駅前噴水広場

お使いの途中で娘夫婦にばったり

八重のどくだみが満開です

氏神様

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