どこの国でも観光客相手の値段は、
現地人との二重価格になっているこ
とが多いようです。
ネパールに行くと、あの国特有の面白い
ものを、たくさん見つけ出すことができますが、
どう考えても貨幣価値につりあわない高価な
ものが多いのです。
ちなみに、この国では先生の給料が6,000円
ぐらいと聞きました。でも現地人の女性が普段羽織っている極く普通のストールを買おうとすると、1,000円以上します。
私がいつもネパールに着いた日に一泊する、カトマンズのチベットホテルの手前角に「ホタカ」というパシュミナ屋さんがあります。
店主のクリシュナは、以前上高地の「5千尺」で働いていたことがあり、日本語が上手です。
ここに行くと、思わず欲しくなってしまう両面手刺繍のストールなど、素敵なものがたくさんあるのですけれど、欲しいと思うものは、大体が1万円以上します。
あるとき教えてくれた人がありました。「インドとネパールは、売値の3倍の値札をつけてある」と……
それを聞いたときから、クリシュナとのバトルが始まりました。
彼とは年賀状が送られてくるような仲になっていますけれど、ここに至っては私は一歩も引きません。
「オクサマ、ソレハナイデスヨ」「そうかしら?もっと安い店見つけたわよ」
「イエ イエ ホントワタシ ウソツキマセン」「じゃぁ 要らない」
「ソレジャ イクラナラ カイマスカ?」
「うーん」とここで私は大博打をうちます。
3分の一以下の値段を言ってみます。彼はあきれたように、
「ソレジャ ショウバイニ ナリマセン」
「残念ね じゃぁ止める」……
こんなやり取りが30分程続いて、
「それじゃまた来年来るね」
「ハイ オマチシテイマス」……
そして翌朝、近くのスーパーに行こうと
出た私を、目ざとく見つけた彼、
「モウイチド ミマセンカ ミルダケ ミルダケ」
「見るだけよ」
そして、昨日の30分のバトルは見事勝ちを制します。
お互いの譲歩という形をとって、3分の一の値段にちょっぴりおまけをつけてあげた値段で、交渉成立です。
学校に行っている以外の時間をもてあまし気味の私にとっては、ほとんどお遊び感覚でのショッピングです。
でも前回行った時は、街はがらがらで、クリシュナのお店もひっそりとしていました。
私もお財布が超軽量状態で、家族のために一番安いカシミヤのセーターを買っただけで、次回を約束して帰りました。
前日の明細を空で言えるほど頭脳明晰で、帰る時に、お誕生日祝いにとストールを呉れてしまうような、気のいい彼に、この次行った時も、会うのが楽しみです。
お店が潰れていなければいいけど。

クリシュナは、リバーシブルのことを
日曜日・月曜日と言います!