耳騒動

 突然耳鳴りがしました。といっても、私は元々耳鳴り族だったのですけれど、
今度のはすこし感じが違います。

 そして何日かたったある夕方、何気なく片方の耳を押さえた私は、愕然としました。

 右の耳に異常を来たしています。テレビの音が急に遠くなりました。

 どひゃ〜又か (*_*)…… 実は私は今から18年前に、突発性難聴に罹って、国立病院に1ヶ月入院したことがありました。

 そこでとっさに下した判断に従って、翌朝ラッシュアワーのお邪魔虫になりながら都心の大病院に行きました。

 ここは人類愛に充ちた院長先生で有名な私立病院で、他の科でお世話になっているので、行きやすいと思ったのが、実はとんでもない判断ミスでした。
 診察申し込みをして待つこと2時間、聴力検査の結果は右の耳の聴力が著しく低下しているということで、これは耳の持ち主としては、検査しなくったって判ります。それで病院に行ったのですから。

やっと回ってきた番で診察室に入ると、神経質そうなお医者さんが座っています。
「お早うございます、はじめまして」「………」このあたりから嫌な予感が走り、部屋を出たくなりました。

 検査表を見て、「右の聴力が衰えていますね」
 
 そして信じられないことに先生は左の耳を覗き始めました。

 「わ〜耳垢だらけだ!」
 
 余談ですけれど私は長じるにしたがって、耳の体質が変わってきました。
 若い頃はかさかさと耳垢を取るのが楽しくて仕方なく、密かに耳掃除を私の
三大趣味のひとつと名づけていたくらいなんです。
 それが何時からかいくらほじっても耳垢が出てきません。

 耳垢よ、お前もか!と体力の衰えを心中嘆いていたくらいです。
耳垢だらけなんて言わせはしませんぞ!

 そして先生は必死になって左耳のお掃除に没頭です。
「痛くありませんか」
「痛いです」
「じゃぁやめた、こんなの取ったって痛いばっかりでしょうがない
今日ははこれで終わり、来週の月曜日の11時に予約入れます」
「先生、月曜日の11時は来られません」
「だめです、その日に来てください、今日は薬を出しますから、飲んだ結果を見ます」

 ほんとは右耳なんだけどなぁ……!見なくてもいいの?これは心のつぶやきです。

 そして6日分のステロイドやらなにやら、大量のものものしい薬が出されました。
 治りたくて行ったのですから、忠実なポチはせっせと食後のお薬漬けです。




 そして、2日経った時、胃の調子がおかしくなり始めました。
 そのうえしつこくほじほじされたもともと健康な左耳が、差し薬によってだぶだぶ状態でだんだん聴こえなくなりました。
 
 もう待ってはいられません。出勤途中の息子が、近くの耳鼻科の存在を知らせてくれました。
 そして恐る恐る行った小さな医院の先生によって、私の悩みは10分で完全に解消されました。

 「すっかりきれいになりましたよ、鼓膜に張り付いていた耳垢も、薬も全部吸い取りましたから……。
右耳は多分ストレスと疲れで軽い難聴を起こしたのでしょう、でもたいしたことはないから、ゆっくり休養して、たっぷりと寝てください。薬は飲む必要ありません。
左耳は少々傷ついていますから、痒くても掻かないように」

 帰りの空の青かったこと!考えたらこの日は私の誕生日でした。

 この日に実感したのが、世の中は騒々しく雑音に充ちている、ということでした。
 何日間かの静寂が懐かしく感じられる今日この頃です。

 え? 大病院の予約?勿論すっぽかしました。 ほ・
……
Cafe Part2

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