奥様 モーツアルトをどうぞ!
いつだったかNHKテレビでN響アワーを聴いていたら、
「1/Fゆらぎ」という言葉が出てきました。
そういえば以前この言葉がひとしきり話題になったのを
思い出します。
そこで忘れっぽい私は、「1/fゆらぎ」について、ネットで
検索してみることにしました。
すると、勉強だいっ嫌いの私には頭が痛くなるような難しい
言葉がわんさと出てきました。
でも、要約すると、雰囲気が伝わってきます。
学問的には、ざっと言えば、電気的導体に電流を流した時、
抵抗値が不安定に揺らぐ、という定理に基づく(なんのこっちゃ?)
といったような理論だそうです。
それが存在するのがそよかぜ、小川のせせらぎ、ろうそくの炎のゆらぎ……
少し判ってきました。
解りやすい例として、幾何学的な直線列とさまざまな太さの入り混じったバーコードが書かれていました。
ビルの谷間に1軒存在する木造住宅…といった感じで、バーコードと直線列を見比べているとバーコードにはなんとなくほっとするものが感じられます。
そして、クラシック音楽、…そういえばこの放送では、モーツアルトの音楽における「1/fゆらぎ」の話題でしたっけ。
うんわかる、わかる。
そして、手作り製品、メタリックなものに反するすこし角のとれた作品が、人の心をほっとさせるのだそうです。
モーツアルトを聴きながら手作り人形で心のハンモックを揺らせている私は、
ここにきて、しかと「1/fゆらぎ」なるものを理解しました。
要するに居心地のよい環境作りのことなのですね。
何年も前、電車の中で見た家の広告で、「ゲミュートリッヒ」というドイツ語が使われていて、
「居心地の良い」というこの単語ひとつで、写真の家がとても素敵に思われたものでした。
まさに1/fゆらぎです。
ゆらぎのある家…といっても今時の欠陥住宅ということではないですけどね。
要するに幾何学的なものの中にある、やわらかい流れといったものかしら?
話が変わりますけれど、この頃人の心に、このゆらゆらと揺れる遊びの部分が
欠落しているような気がします。
最近のことですけれど、私が毎週行っているスポーツクラブで何度か不愉快な思いをしました。
まず、お風呂の洗い場で、隣の人に「水を掛けられた」と言って文句をつけているのを2回見ました。
そして、先週は遂に私にその災難がふりかかりました。
シャンプーをしていた時、うしろからバサッと体に水を掛けられたのです。
びっくりして振り返ると、その女性(かなり長いこと人間をやっているようでした)は、
「泡が流れてるからね」、
とひと言!(ご苦労様に水風呂から5回もくみ出して、それも高い位置から…です)。
でもそれだからって、体に水を掛けられてはたまったものではありません。
これはどう考えてもお互い様です。謝る筋合いではないと思ったので私は黙っていました。
ちょっと前に、その人が私の近くで、泡だらけで体を洗っていたのを見ていたのですもの。
この日は、もうひとつ不愉快な思いをしました。
私は自分の体調にあわせて、ゆっくりペースで泳ぐことにしています。
勿論早く泳ぐ人の邪魔にならないように、「ゆっくり泳ぐ人のためのコース」で泳いでいます。
その時も金魚みたいにゆらゆらと500メートルを泳ぐ積りでした。
それが4回ぐらいターンした時、後ろの人から足を押されました。
気にしないでいると、25メートルの間に3回!
ターンする時、たまりかねて立つと、追いついてきたその人は(おばはんでした)、
形相すざましくにらみつけて追い越していきました。
このコースはゆっくり優先、追い越し禁止なのに………余程邪魔だったのでしょうね。
それ以来居心地の悪くなったプール行きをやめたい誘惑と戦っています。
でも私だって、30年以上自分の健康のためにプログラムを組んで通っているのです。
色々な思いを味わう現代社会ですけれど、私はなんて幸せ!身についた「1/fゆらぎ」のおかげで、
忙しいなか、ゆったりと自分の時間を持っていられるのですから。
もし私をいじめようと思っている人があるとしたら、それは無駄なことです。
私のような単純な人間は、何が起きようとも、モーツアルトのピアノコンチェルト
を聴いただけで、とろとろと溶けてしまいそうな幸せ感に包まれてしまうのですもの。
世の中の人が、ゆったりと適応性のある気持で生きていたら、毎日のように報道される
悲しい事件も起きないのではないかしら?
私は明日も嬉しいことに終日自由時間です。モーツアルトを聴いて、お人形さんを
作るのに精をだそうかな。「1/fゆらぎ」を満喫しながら……。
