我が家の同居人忍者


 生来怠け者のワタクシ、一年中何かしなくてはならないことをほったらかしにしていて、脅迫観念に追いかけられています。

 たとえば、台所の換気扇、リビングの床のワックス掛け、押入れ、写真の整理、不用品の廃棄などなど、数え上げたら日が暮れてしまいます。
 
 この間意を決して押入れだけは整理しましたけれど、それ以来場所を移動したために行方不明のものが数点あり、頭を抱えています。

 そういえば絵葉書って溜まりません?私はどこかに行くと後のことを考えずに絵葉書を買う癖があり、これは反省すべきこと!と自覚しているのですが……

 そこで考えました。郵便やさんが折角「ふみの日」というのをつくっているのですから、毎月23日にはせっせとお便りを書こうかしら?
パソコンをやっている時の脳は、完全に停止状態だそうですから、方向転換して、近年ますます下手になった字で、思いつくままにお手紙を書くのもいいかも……。

 それでとりあえずは、溜まった絵葉書はやっつけられるけれど、そんなことに熱中したら、もっとやるべき事が溜まってしまいそう!ああ、どうしよう!

 ところでわたくし、今、人に言えないあるものを探し回っています。
度重なる失せ物に最近になって、はたと思い当たりました。

 我が家にはどうやら忍者が住みついているらしいのです。
この忍者はかなり悪質で、次々と私の大事なものを隠してしまいます。

 忍者のもっとも好みとするところは鍵、これは一日に1回悪さをします。それからお財布、眼鏡、時計、新しい携帯のマニュアルなど、私が隠されて困るものを次々に見つけては、喜んで持って行ってしまいます。

 ゆうべとんでもない夢を見ました。コンサートが始まっているのに、楽譜がみつからない!
ディナーつきなので、しょうがないからご飯を先に食べましょう、なんて……。

 ラジオで小耳に挟みましたが、片付けられない症候群には、れっきとした病名があるそうです。
 でも私の場合、お医者さんに行ったら治るのかな?治らないだろうなぁ!
だってもう半世紀も続いているのですから……
 
 忍者退治のおまじない、お教えしましょうか?

 これは或る本に出ていたのですが、京都のさるエッセイストのご老女の教えです。
縫い物をしていて、針がなくなったら

 〜きよみずの おとは(わ)のたきの おとひめさま 
            うせたるはりの しれぬことなし〜

と唱えると、あらあら不思議、必ず見つかるそうです。

 そこで私も試しました。そして、家の中にある限り殆どの失せものがどこからともなく姿を現すのです。

 でもこの間はびっくり仰天しました。1週間中おまじないを唱えてもどこからも見つけられなかった眼鏡が、見つかりました。

 どこだと思います?近所の郵便局の窓口!
女局長さんいわく、「すぐに来るだろうと思っておいといたのよ」

 諦めて大枚をはたいて作ろうと決心したその日のことです。
我が家の忍者はまだまだ情けがあるようです。

 さて、諦めないで今日は家の鍵探しに専念することにしましょう。
 
 見つからなかったらこの秋晴れにどっこも出かけられませんもの!

後日談
  ……この話を書いて1週間……
 出て来ましたよぅ! 探し物が!
 2週間ぐらい前に持って出かけたバッグのポケットからです。

 探し物をしている皆様! 声をそろえて歌いましょう!
 〜きよみずの おとはのたきの……〜ってね。