Gパン買っちゃった!


 柄にもなくGパンが好きです。
我ながらの短足を嘆息しながら……今まで臆面もなく穿き続けてきました。それがです、最近のGパンときたら、とにかく胴回りが(そう、この場合は、ウェストなんてしゃれた言葉を使うのもはばかられまして)私に反発を仕掛けてきて、うっかりすると見せなくてもいい体のスペースまでが、好奇心あらわにしゃしゃり出てくるといった状態で、油断もすきもあったものじゃないのです。

そして、最近のお嬢様方のスタイルをみるに、Gパンによって、たださえ長い足が、更に強調されるような、細身なんですよね。それでもヒール靴を履きたくない私は、ちょっとでも私にフィットするとみるや、目に付いたGパンを即座に買ってきて、今わたしの引き出しには、美味しいものを食べる日は「穿かない」(いえ、「穿けない」でした)ベンチ組がすくなくとも4本!

 或る日耳寄り情報が飛び込んできました。最近はウエストにゴムのはいったのが売り出されてるそうです。
なんでもおへそ周りがゴムなんだというのを聞いて、私はむらむらとしてきました。
「むらむら」ったって、別に腹立てているわけではありませんよ。なにしろ小さな針でつつかれたぐらいのショックでも、わたしの好奇心を触発するものがあると、「むらむら」なんです。

 来合わせたお友達の一人のカズコさん(私の周りには、足の指を使ってもまだ数え切れないほど、たくさんのカズコさんが存在するのです。同姓同名のカズコさんが、なんと、3人!)に話すと、坂の下の「ムジ」で売ってるわよ、マタニティじゃないと思うわ。おばさん用よ。

 今の私にとって、これに上回るラッキー情報は何処探したって見つかるものじゃありません。
早速彼女についていってもらい、目的の品物を手に取りました。
「これ試着しま〜す」「どうぞ、どうぞ」売り子さんのお嬢さんが、にこやかに試着室のカーテンを引いてくださいました……と、ここは何故か敬語になってしまいます。早速試着、「う〜んはいったぞぅ、わるくない」カーテンを開けて、カズコさんを呼ぶと、「あれ?後ろと前反対じゃない?」近くでシャツを見ていた人が笑いをこらえているのが、目に入りました。(無礼者、さがりおろう)

 兎に角欲しいものが見つかって、天にも昇る心地になったおばんは、あたりを蹴散らかすほどの有頂天ぶりです。
買って帰って、早速隣に住む娘の家に直行しました。
じっくりと手にとって見ていた彼女が一言、「マタニティ用って書いてある…」
 恥ずかしがったのは娘のほうです。知らぬこととは申せ、すんずれいをばいたしました。
いくら私がおデブになったからといって、臨月とは比べようもなく、スマートなんです、はい。

 だから今、流石に少々落ち加減のGパンのお腹部分を3センチほど詰めて、これを穿いて、プールに通っておりますんですわ。
そして、あらためて、このお店はなんと店員教育が行き届いていることよ!と感慨ひとしお?です。
初老?中老?いえいえ、大老の局にマタニティを試着させてくださったのですもの。
「なんじ、褒めて遣わす」。
 そして、この愛すべき“マタニティGパン”にほれ込んだ私は、「もう1本買って来ちゃおう!」と、密かに思ってますんです。

HOME