シャープさんとフラットさん
 音楽の表現法?にシャープ、フラットがあるのを皆様ご存知でしょう?
ピアノの鍵盤図を頭に思い描いてください。白い鍵盤の奥に黒い鍵盤が2個と3個の連続で乗っかっていますよね。白い鍵盤の音は、ドレミファソラシドを表す幹音、そのミとファ、シとド以外の音の間に存在している黒い鍵盤を派生音といいます。そして、たとえばレの斜め右上が「レのシャープ」、あるいは「ミのフラット」と位置づけられています。
 当然ながら「レのシャープ」と「ミのフラット」の音は同一音で、この関係を、異名同音あるいはエンハーモニックといいます。
……と、ここまでがプロローグ、つまらないお話はこれまでにして、さて、本題にはいります。

 フラット系の調性が好きです。
たとえば「ふるさと」  ♪〜ウサギ追いしかの山〜〜♪
という誰でも知っている歌ですが、これがシャープ1個のト長調で書いてあると気に入らないのです。この歌は断然フラットの曲なんです。
 オーケストラ楽器の知識は生憎と皆無状態ですが、管楽器の音楽が好きなのはフラット系の楽器だからではないかしら?
 特にモーツアルトのオーボエやクラリネットなどを聴いていると、もう体かバターのように溶けて、このまま空に上がってしまいそうな気分になっちゃいます。

 私は間違いなく文系人間です。でも学校時代は理系文系を問わず、勉強が大嫌いでした。体育も苦手でドッジボールは試合開始後1分で外野行きでしたし、跳び箱なんて3段以上飛べた記憶がありません。作文の時間は最後の5分間まで白紙のままでした。理科の実験室で授業中にチョコレートを作ったことだってあるのです。
 唯一音楽だけが1週間の授業の中で好きな時間でした。
そんな私が何故かコチコチの理系の夫と結婚したのは、自分でも意表外のことでした。

 本題に入ったばかりで、横道に逸れてしまいました。
私の感覚では、シャープは苦手な理系に属するような気がしているのです。

 声楽家はオペラ以外は自分の音域に合わせて、調性を替えることが可能とされています。
たとえばハ長調を半音上げると嬰ハ長調となって、シャープが7個つきます。
これを言い換えれば変ニ長調で、フラット5個で書けるのです。

 私はもともとピアノを弾くことがあまり好きではありません
(ちなみに聴く音楽で一番好きなのはモーツアルトのPコンで、これは一日中聴いていても飽きません。とろとろと心が溶けてゆく快感に身をゆだねていると、あの人も、あのことも、もうみ〜んな許して上げちゃおう、という気分です)。
 なぜ弾くのが嫌いかというと、ピアノは勉強しなければならないから!
ピアノ科の人が一日8時間も練習する、と聞いただけで、頭が痛くなってしまいます。その点声楽は、なま(生)楽器の声帯のためには、1回の練習が30分がベストとされているのです。つまり怠け者にとっての実に都合のいい楽科なのですね。
 余談ながら声楽科の学生は、どうしてあんなに楽天家揃いなのかしら?これは大きな声を出していて、脳の考える中枢が壊れてるのかも。あら、同級生の皆様、ごめんあそばせ。

 音大時代のエピソードで、泣きたくなるような秘密がありました。
声楽科はピアノが必修で、学期ごとに試験を受けなければならないのですが、あまりの練習不足に、2学期続けて、同じモーツアルトのハ短調の幻想曲を弾いたことがありました。
打ち明け話をしついでに告白すると、1回目はなんと!先生の情報によれば、声楽科で1番だったそうです。

「だれですか?うそばっかり!」っていってるのは!

 それに味を占めて弾いた2回目は、我ながらびっくりのボーダーラインすれすれ!あの時のピアノの先生のおっかない顔を今でも覚えています。これには理由があります。先生が私に与えてくださった自由曲のベートーベンのソナタに、嫌いなシャープがたっぷりとついていたのです。練習するのが嫌でさぼっていたらタイムオーバー!

「うひゃーどないしよう、しゃあない、もう一回前のをやるか」

 またまた横道に逸れました。さっき書いたシャープ7個の嬰ハ長調の曲がピアノだと、どうしても音がつかめないのです。
 これは私の左脳が働いていない証拠ではないかしら?と密かに思っているのですが、これを頭の中でフラット5個の変ニ長調に意識変換することで問題解決です。
だから「ふるさと」もト長調で書いてあると、さっさとヘ長調に切り替えてしまいます。

 我が家でやっているコーラスの曲も、気まぐれで下のパートをつけたりするときに、さっさとフラットの調性に書き換えてしまいます。そうすると、とてもホカホカした気持ちになって落ち着きます。

 最近になって気がつきました。我が家のファミリーは私以外はシャープ系人間です。
でも、どうやら娘の旦那様は、私と同じO型の、フラット系人間のようです。
仲良くしようっと!


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