厄落とし
或る日大好きなお友達の来訪です。
私は大好きな人のために、大好きなシュークリームを
買いに行きました。
そのお店のシュークリームは、とても美味しいのです。
でも残念なことに、このお店の人たちは、あまり
お客扱いがよくありません。今日も今日とて予感が
当たって、一番愛想の悪い人にぶつかってしまいました。
………以下再現しますね。
私 : 「シュークリームを6個下さい」
店員 : 「…………」 黙って引っ込む。
そして、箱に詰めた6個のケーキを「これでいいですね」と見せて、また引っこむ。
私 : 「保冷剤いれてください」
店員 : 「…………」
私 : 「1万円札と40円でお願いします」
店員 : 「…………」 だまってお金を受け取る。
店員 : 「3,300円のお返しです」
そして、すぐに他のお客の応対に行ってしまう。
(…はい、ここで算数のお勉強です。このケーキのお値段は1個いくらでしょう?)
……あれ?私1万円札渡したんじゃなかったかしら?……
でも何故かその時、私は自信がなくなってしまい、ひょっとしたら渡したのは、五千円札だったかもなぁ、ともぞもぞしているうちに、気がついたらお店の外に出ていました。
その日は10月にはいったというのに、夏の戻りの酷暑でした。
当然保冷剤が入っているものと思っていた私は、1時間ちかく箱をぶら下げて街を歩いていました。
そして帰宅して箱の中のドライアイスを出そうとしたら、なんと! 保冷剤は入っていませんでした。
この日の大切なお客様に生ものを出していいものかどうか、迷ったあげくついにお蔵入りでした。
何日間か、思い出すたびに悔しい思いをしました。
だって、私が渡したのは、やっぱり1万円札だったのです。
間抜けでしょう?
そして、何日もかかってこの悔しいケーキを食べた私は、1キロ太ってしまいました。
いま私の住んでいる街には美味しいケーキやさんがいっぱいあります。
この店が出来た50年前ならいざしらず、こんな商法でやっていけるのかしら?
来月はネパールに行くことになっています。出かける前に、こんな厄落としをしたのですから、ネパール行きはさぞかし快適な旅になることでしょう。
めでたし、めでたし……と無理やり自己暗示をかけるワタクシなのでありました。
そしてその店には2度と再び行くのはやめよう、と心にきめています。