2004.11 デイホーム
私の生活のサイクルのなかに、もうひとつ毎週月曜日のデイケアホーム訪問があります。
我が家から歩いて10分ほどのこのホームは、明るい日差しが一杯差し込む、とても綺麗な建物です。3年ぐらい前にこの施設が出来た時から、前を通るたびに、ここで歌が歌いたいな、と考えていました。でも、何の伝てもないし、いきなり入っていく勇気は私にはありません。
ずっとその思いを抱き続けて、ほぼあきらめた頃に、チャンスがやってきました。去年の夏の事です。
地元の私の大好きなレストラン、「デシモーネ・木畑亭」でデイホームのケアマネージャーの須藤さんにお目にかかれたのです。
勿論!千載一遇の機会を逃すような「うぶ」な私ではありません。
そして、またひとつ、私の生きがいが生まれました。
いつだったか、誰かに、貴女は典型的な射手座だ、と言われた事があります。
射手座の人間は、家にじっとしている事が出来ないそうです。
これについては、まったく反論の余地はありません。
我が40年以上連れ添った夫は、完全にあきらめの境地でしょう。何年か前に友人からの電話をうけた夫は、「奥様は?」と聞かれて、「お外様は外出中」といったとか…
でも、何十年も心に内臓し続けていた、外に出たいという願望は、今やらなかったら、チャンスは失われてしまいます。
そんなわけで、毎週月曜日の朝は出勤です。長い事クラシック一辺倒だった私ですが、ここに至って、レパートリーは驚くべき拡大ぶりを遂げました。
音楽療法という専門的な勉強はしていませんが、音楽が脳の活性化に繋がると言う確信はあります。だから、リクエストはなんでもOKです。そして、覚えたのが、湯島の白梅、星影のワルツ、船頭小唄……。再認識したのは、日本の歌謡曲のメロディはなんて美しいのだろう、ということです。
歌っている皆様の表情は、最初は固いものでした。遠慮がちに辛うじて口があいて居る、と言う感じでしたが、1年経った今は、とても元気な声が響いてきます。
そして、こんな私にも、どうやらファンが出来たようです。
「貴女が来るから月曜日は休めないよ」というおじいちゃま、「古い歌を歌えてほんとに元気になるわ」といってくださるおばあちゃま……(私だってその方たちとそう歳は変わらないんですけれどね)
その方々から私も元気のもとを頂いているのです。
そしてここでも、朝ブルーだった心がピンク色に変わるのを心から期待して、今日もたくさんの歌を歌ってきます。

