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ネパールタイム

 それは6年前のことでした。

 山の稜線に太陽の影が差し掛かる午後、所在なさにぶらぶらと村を歩いていると、どこからともなく子供の声が聞こえてくるのに気がつきました。
 
 その声の元と思われる一軒の小屋をのぞくと、なんと、そこには小さなこどもが、あたかもすずめの学校の生徒たちのように小さなベンチで、おしくらまんじゅうをしているではありませんか。
 出会い頭に出てきたすずめのがっこの先生が、インド系のハンサム青年であったことにも惹かれて、気がついたら誘われるままに教室のなかに入り込んでしまっていました。
   
 ここからが、この山の子供たちときみこおばさんの物語のはじまりです。
 
 私の生活設計は、この初めて訪れたネパールの旅から一転して、心ときめく毎日のはじまりとなりました。
 
 ここナガルコットは、別名「ヒマラヤの展望台」と呼ばれ、晴れていれば、名峰ランタンとその左右に広がるヒマラヤのたくさんの山を鑑賞出来る海抜2100mの丘なのです。
  
 そもそもの、事の次第をお話しすれば、その前の年の夏、カレーを食べに立ち寄った、北軽井沢の「ポカラ」というレストランのオーナーの戸張さんから、ネパールゆきのツアーのお誘いを受けたことから始まりました。 

 彼は、カトマンズの王宮近くのフランス大使館の隣で、日本料理のレストランと、中庭に露天風呂がある「ロイヤル華ガーデン」の経営者でもあります。

 その頃私たち夫婦は、お互いの両親を見送り、子供たちもひとり立ちして、結婚以来初めて自由な自分の時間を持てるようになり、海外旅行熱に浮かれていました。
 
 そんな折のネパールツアーのお誘いを、何の気なしに承諾したことが、私にとってのばら色の老後をプレゼントされる引き金になろうとは、自分でも驚きでした。

 もし、この時ナガルコットで、ヒマラヤが見えていたら、今まで6年間続いている子供たちとの出会いもなかったことを考えると、人生というのは、綾なす織物の縦糸と横糸の出合いというようなものを、しみじみと考えさせられます。

 ヒマラヤ登山をしない人たちにとって、手軽に山を鑑賞出来るポイントはネパールにはたくさんありますが、ナガルコットというところは、そのなかでも一番簡便に行く事の出来るビューポイントとして有名です。
  
 当然私たちも、その手合いで、2泊3日の予定を組んだのですが、一行のなかに、神様のご機嫌を損ねてしまった人がいたのか、山はまったく姿を現しませんでした。

 ヒマラヤ以外にあるものといえば、松の生い茂った山道と、段々畑だけのこの丘の上で山が見えないとなると、3日間の滞在では、ただただ村の中を歩くしかありません。

・・・・・というわけで、散歩の途中でヒマラヤの神様は、ケント・パブリック・スクールの子供たちとの出会いという、 この上ない 贈り物をしてくださいました。

 これから展開してゆく私のネパールタイムを順次ご報告していきたいと思います。

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 2004.9.29 その後の進展

ケントスクールのこどもたち

ヒマラヤの青いけし
(柳内志保子さん撮影)